自然遺産分野

ああ
 
 樹上性陸産貝類を用いた森林環境の指標化
  (みんなのカタツムリプロジェクト)


【事業概要】

 森林は多くの生物の重要な棲み家である。しかし樹上に存在する生物多様性は、アプローチの難しさゆえに、これまで保全対象として認識されることが少なかった。本研究では、ジャングルジムやクレーンといった樹冠観測システムを用いて樹上性の絶滅危惧カタツムリ(サッポロマイマイ)の行動を三次元的に明らかにし、また自然林の伐採や人工林化が生息密度と遺伝子流動に与える影響を解明することで、樹冠の生物多様性に配慮した森林の保全手法を検討する。


サッポロマイマイ(Euhadra brandtii sapporo

樹上で生活するサッポロマイマイ


樹冠を観測するためのジャングルジム(北海道大学苫小牧研究林)


林冠クレーン


地上での調査


「♪でんでんむしむしかたつむり~♪」のフレーズでおなじみなように、カタツムリは、日本人にとって親しみ深い生物である。本研究の成果は環境教育やフィールド実習の素材としても活用し、普段は目にすることの難しい樹(き)の上の生物多様性について理解を深めていくきっかけとしたい。


【期間】

   20144月-20173


【事業予算】
三井物産環境基金

【主要な構成メンバー】

佐伯いく代(代表、筑波大)、太田民久(北大), 丹羽慈(自然研), 日高周(自然研),長田典之(北大)、日浦勉(北大)

 
 希少樹種クロビイタヤの自然史と保全


【事業概要】

 クロビイタヤ(AcermiyabeiMaxim.)は、日本固有のカエデの一種で、北海道、東北、および中部地方に分布する落葉広葉樹である(写真1)。

 葉は深く5裂し、いかにもカエデらしい、手のひらを広げたような形をしている。幹は赤身がかった茶色をしており、春に黄色の花をさかせ、夏から秋にかけては翅果(しか)と呼ばれる、翼(よく)のついた果実をつける(写真2)。北海道や東北産のクロビイタヤはこの果実にビロード上の毛がついており、指でふれるとまるでベルベットに触っているかのような感触がある。本州中部地方には、一部、毛のないツルツルした果実をつける個体があり、シバタカエデ(A.miyabeif. shibatae (Nakai) K.Ogata)として区別される(写真3)。

写真1 クロビイタヤ(北海道安平町)


写真2 クロビイタヤの翅果


写真3 シバタカエデ


 クロビイタヤの自生地は、北海道では千歳市を中心とした道央地方と、むかわ町から浦河町にいたる日高地方に集中している(図1)。東北地方では、青森、岩手、秋田、福島県などから自生が報告されており、さらに離れて、群馬県や長野県北部にも生育地がある。こうした不連続な分布をもつ植物は珍しく、なぜ現在のような、謎めいたかたちに至ったのかについてはわかっていない。


図1 クロビイタヤの分布
(永光http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/raretree/13_AMindex.htmlより転載)


 本種は、河川に付随する湿った平坦地(氾濫原)や、そのさらに外側の谷壁斜面(こくへきしゃめん)に生育していることが多い(写真4)。しかしこうした土地は、河川工事や、道路の建設、牧場を含む農用地の造成などにより、森林以外の土地利用に変換されてきた。クロビイタヤは、もともと河川沿いを中心とした限られた場所を生育地とする樹木であったが、近年の人間活動によって生育地が著しく制限されるようになり、個体数を減らしているものと考えられる。環境省のレッドリストでは絶滅危惧種(ランク:VU)として記載され、保全の重要性が指摘されている。本研究は、フィールド調査と遺伝子解析からクロビイタヤの自然史を明らかにし、その保全手法を提示することを目的とする。


写真4 クロビイタヤの群生する河畔林(北海道千歳市)


【期間】

      201310月-20153


【事業予算】

      科学研究費スタート支援

【主要な構成メンバー】

佐伯いく代(代表、筑波大)、永光輝義(森林総研)、大谷雅人(森林総研)、平尾章(筑波大)、田中健太(筑波大)、日浦勉(北大)


 
 小笠原諸島への新たな外来種の侵入・拡散防止に関するワーキンググループ


【事業概要】

20117月に世界自然遺産に登録された小笠原諸島は、多くの固有種の生息地であるとともに、ノヤギ、ノネコ、グリーンアノール、ニューギニアヤリガタリクウズムシなどの外来種による生態系への影響が大きな問題となっています。世界遺産委員会における決議を受け、新たな外来種の侵入と既知の外来種の拡散防止を図るため、小笠原諸島自然遺産地域科学委員会の下に新たな外来種の侵入・拡散防止に関するワーキンググループが設置され、侵入・拡散ルートの特定、緊急対応マニュアルの作成などに取り組んでいます。筑波大学世界遺産専攻の吉田正人教授が座長となり、ワーキンググループの開催、科学委員会への報告を行っています。


小笠原諸島への外来種「グリーンアノール」

【期間】

2012年〜現在


【主要な構成メンバー】

吉田正人(筑波大学)、磯崎博司(上智大学)、加藤英寿(首都大学東京)、五箇公一(国立環境研究所)、千葉聡(東北大学)


【動画】

小笠原諸島の外来種問題とワーキンググループの活動は、以下のサイトに動画がアップロードされています。

独立行政法人科学技術振興機構サイエンスチャンネル

http://sc-smn.jst.go.jp/M130001/detail/M130001020.html


 
 流山市における都市化による鳥類相の変化


【事業概要】

2005年に開通したつくばエクスプレスは、筑波大生にとってはなくてはならない交通機関です。一方で、沿線の都市化による森林や農地の減少・分断、生物多様性への影響が予想されます。本研究では、流山市の3つの森林(市野谷の森、ふるさとの森、成顕寺の森)における冬季の鳥類種数、個体数の変化をモニタリングするとともに、つくばエクスプレス開通前の19932000年にNPO法人さとやまが実施した鳥類センサスとの比較を行い、都市化による鳥類相、種数、個体数への影響を考察しました。


シジュウカラ

【期間】

2009年〜2011年(千葉県委託調査)
2012年〜現在(自主調査)


【主要な構成メンバー】

吉田正人(筑波大学)、高橋佑太朗(筑波大学)、斉藤裕(NPO法人さとやま)


【PDF】

最初の3年間(20092011年)の調査結果は、千葉県生物多様性センター研究報告からダウンロードすることができます。

千葉県生物多様性センター研究報告第7号(20142月)

http://www.bdcchiba.jp/publication/bulletin/bulletin7/rcbc7_5-choruiso_henka.pdf