<ベルリン留学体験記>

 20143月から20152月にかけて、ドイツの首都ベルリンにある〈ベルリン自由大学〉に交換留学をしました。留学の目的は修士論文の研究テーマである「地域特性の保全にアートプロジェクトはいかに寄与するか?」という課題のために、ベルリンビエンナーレを事例に現地調査とデータ収集をすることでした。

 日本でもアートを活用して地域活性化を促す“アートプロジェクト”の取り組みは少なくありません。しかしながらベルリンの取り組みは今後の日本で「アートを活かしたまちづくり」に新しい可能性を開いてくれるのではないかという期待と希望を胸に、ベルリンへ旅立ちました。

 

語学コースの先生とクラスメート。国籍は皆ばらばらです。


ベルリン生活はじまる

 ベルリンの生活が始まって一ヶ月間は語学コースに参加しドイツ語を集中的に勉強しました。4月から夏学期が始まり授業が始まったのですが、当初は言葉の壁が大きく授業に全くついていけず、しばらくはドイツ語の聞き取り練習の日々でした。留学生用の語学コースに参加しながら、宿題、復習、文献読解の繰り返し。日常生活では、ペットボトルが換金できること、学食のまずさ、ビールの安さ、食べる量の多さ、ソーセージの種類の多さ、飲み会がたいてい夜21時位から始まること、日曜日は全てのお店が休業、などなど・・・、色々なことに新鮮味を感じながら次第に生活に慣れてきた5月末、ついに待望のベルリンビエンナーレが始まりました。

アイスバインというドイツの伝統的な食べ物。ドイツ人は一人で全部たいらげます。


ベルリン ビエンナーレ

 ベルリンビエンナーレは、2年に一度ベルリン市内の様々な場所に現代美術を展示するイベントです。これまで展示場所はギャラリー、映画館、教会、アパート、墓地、レストラン、オフィス、駅、廃墟の旧学校など様々な施設に展開し、こうした多様な場所に会場が点在するのがベルリンビエンナーレの特徴でした。しかしながら、8回を迎えた昨年のビエンナーレは例年に比べて展示場所が美術館と2つのギャラリーの三カ所だけと少なく、しかも全ての会場は元々作品展示のための場所であって寂しい印象を受けました。どういう作品がそれぞれの場所で展示されているのか、ガイドツアーに参加しながら作品の説明を聞いていきます。関連した小さなイベントにもいくつか参加しました。こうして得られた情報を踏まえ、第8回はどの場所でどのような作品が選ばれる傾向にあったのか、情報を整理しました。

 この他にも、過去の開催場所から特に会場が密接している通りを調査しました。文献を読みあさり、街をひたすら歩き回りながらその通りの歴史、現在の様子や特徴などを把握しつつ、何かデータになりそうなものがないか探し歩きました。あまりにも同じ場所を何度も徘徊したので、住人がいぶかしげな目で見てきたときは焦りました。


メイン会場のギャラリーの様子


ガイドツアーの様子


関連企画のイベントの様子

飽きない街、ベルリン

 ベルリンには本当にたくさんのイベントがあるため、住んでいて飽きることのない街でした。この一年を通して、数々のアートイベント、音楽祭、ワールドカップ、イルミネーションイベント、ハロウィン、壁崩壊25周年ライトアップイベント、クリスマスマーケット、ベルリン映画祭、大晦日のまるで戦争のような花火打ち上げ、日曜の蚤の市、トルコマーケット、国際マーケット、とにかく多岐にわたるお祭り的なイベントが次々に開催されていました。

 また、これらのイベントでは歴史的な建物が利用されることが多く、今まで知らなかった使い方を間近で見ることができました。日本でもこのようなイベントができたら面白いだろうな、と思うような新しい発見が多くありました。

ワールドカップ、ブランデンブルグ門前のパブリックビューイングの様子。

ドイツ代表の試合の結果が駅の電光掲示板にも反映されたことには驚きです。ドイツの国技と言っても過言ではない熱狂ぶりで、開催中皆いつ仕事をしているのか不思議でした。

若者が集う場所にある、西ドイツ時代の名残です。一見廃墟に見えますが、倉庫だった建物を現在はアートやデザインなどのイベント会場として使用されています。他にもアンティークショップ、ロッククライミングなどのスタジオとしても使われています。


毎週二日だけオープンするマーケットです。歴史を刻んだ建物の中に、多国籍の屋台が並びます。ちなみにこの場所限定の地ビールもあります。ベルリンにはこれ以外にも歴史的な建物をマーケットとして活用している所があり、マーケットへの転用はヨーロッパ全体で流行っている模様です。

ベルリンフィルハーモニーでの公演の様子です。この会場ではオーケストラやコンチェルトなど、客入りに関係なく基本的に毎日公演があります。ベルリンは美術だけではなく音楽も有名で、芸術文化にこれだけ投資できていることに色々考えさせられました。


ここはテンペルホフという公園で、2008年まで空港だった場所です。滑走路もそのままの状態で残っており、天気の良い日はカイトを飛ばしている人がいるなど、広大な敷地でしかできない遊びが繰り広げられています。


ベルリンの壁崩壊25周年ライトアップイベントの様子。一番印象的だったイベントです。壁があった場所にバルーンのスタンドライトを並べ、定時になるとブランデンブルク門の前から順に誰かの思いが綴られたメッセージ付きのバルーンを飛ばしていきました。25年前に何があったのか、それを追体験できる出来事だったと思います。

今後の課題

 日本におけるイベント企画にあたって、ベルリンの街で体験したことを活かした「文化財や遺産、文化資源の活用へとつながるアートプロジェクトの実現」が今後の私の課題です。日本ではどのような働きかけをすると文化資源の保全に繋げられるのか、それを具体的なアイデアに結び付けていきたいと思います。

 ベルリンでは様々なイベントを通して、その方法など新しい発見を得られました。これから、他国の取り組みにも目を向けながら、多角的な視点で日本のアートプロジェクトのあり方を考えていきたいです。

(修士2年 玉垣 唯 2015年4月)